大阪電気軌道デトボ151形電車

大阪電気軌道デトボ151形電車(おおさかでんききどうデトボ151がたでんしゃ)は、大手私鉄近畿日本鉄道(近鉄)の前身である大阪電気軌道(大軌)が、1921年に製作した無蓋電動貨車である。のち近鉄に引き継がれ、近鉄モト700形となったが、新造や合併による引継の旅客車と番号の重複を避けるため(大軌時代を含め)4度も改番を行い、最終的にはモト50形となった。

概要

1921年にデトボ151 - 153、翌1922年にデワボ156 - 158の計6両が製造された[1]。製造は158が田中鉄工所である他は、藤永田造船所である[1]。有蓋電動貨車デワボ151形との通しの番号となっており、形式内の番号は連続していない。

車体

車体は151 - 153・156・157が全長11,645mm、最大幅2,463mmの木造車体であり[2]、両端に乗務員室を設け、いずれも3枚の窓を設けた非貫通構造の妻面を備える[3]。前照灯は妻面幕板中央に灯具を取り付けており[3]、長尺物を積載できるように乗務員室の幅が車体より狭いのが特徴である[4]。またアンチクライマーを装備しており[5]、車体下部にはトラス棒が取りつけられている[3]。 一方、158は全長約15 mと他の5両より長くなっている[1]

主要機器

主電動機は全車とも78kWゼネラル・エレクトリック(GE)社製GE-240A形2基搭載とされた[1]。制御器は151 - 153・156・157が間接非自動式のGE社製を、158がMK制御器を搭載した[1]。台車は151 - 153・156・157がボールドウィン社製BW-76-18K[2](158については不明)、ブレーキについては全車ともGE社製非常弁付き直通ブレーキを装備している[1]

改番・廃車

デボ61形が増備されてくると、100番台の電動貨車は車番の重複が考えられたことから改番を行うととした。このため、1923年12月10日付で本形式はデトボ600形・デトボ700形に改番された[1][6]

デトボ151形デトボ158 → デトボ600形デトボ601
デトボ151形デトボ151 - 153・156・157 → デトボ700形デトボ701 - 705

その後、デトボ600形についてはデボ600形が登場する以前に廃車となった。一方それ以外の5両についてはその後も在籍し、1942年の称号改正では番号はそのまま、記号をデトボ→モトに変更している[6]

その後、1950年4月に本形式は再度改番を実施した。これによりモト950形となった[6][4]

モト700形モト701 - 705 → モト950形モト951 - 955

その後、1961年に900系の登場を控え3度目の改番を行い、モト150形となっている[5][4][7]

モト950形モト951 - 955 → モト150形モト151 - 155

その後、1964年に三重電気鉄道との合併に絡み100番台の番号をナロー車両に明け渡してモト50形となった[5][4][7]

モト150形モト151 - 155 → モト50形モト51 - 55

また、1955年には951にレールなどの重量物運搬荷役のために起重機を取り付けている[8][9]。 また、1969年時点ではブレーキを非常弁付き直通ブレーキからA自動空気ブレーキに改造している[4]

奈良線系統で長尺物を運べる車両は、1960年にチ90形貨車が登場するまでこの1形式のみであり、レールや電柱を運ぶのに用いられていた[4]

その後製造以来45年が経過し老朽化が進行していたこともあり、1500V昇圧工事完成の時点で全車廃車の方針となり[4]1969年9月21日の昇圧時に廃車され、現存しない。[5][10]

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d e f g 藤井信夫 車両発達史シリーズ8『近畿日本鉄道 一般車 第1巻』44 - 45頁
  2. ^ a b 慶應義塾大学鉄道研究会 『私鉄ガイドブック・シリーズ第4巻 近鉄』324頁
  3. ^ a b c 慶應義塾大学鉄道研究会 『私鉄ガイドブック・シリーズ第4巻 近鉄』257頁
  4. ^ a b c d e f g 鉄道ピクトリアル 1969年7月号(No.226)「私鉄車両めぐり(78) 近畿日本鉄道[終]」 71頁
  5. ^ a b c d 鉄道ピクトリアル 1975年11月臨時増刊号(No.313)『近畿日本鉄道』「私鉄車両めぐり[106] 近畿日本鉄道」 79頁
  6. ^ a b c 藤井信夫 車両発達史シリーズ8『近畿日本鉄道 一般車 第1巻』80 - 81頁
  7. ^ a b 近畿日本鉄道 『鉄路の名優 電動貨車』(2020年8月26日時点でのアーカイブ)、2021年4月24日閲覧
  8. ^ 『近鉄電車形式集.1B』P123
  9. ^ 鉄道ピクトリアル 1960年2月号(No.103)「私鉄車両めぐり(38) 近畿日本鉄道[2]」 48頁
  10. ^ 三好好三『近鉄電車』p.216

参考文献

  • 慶応義塾大学鉄道研究会編『私鉄ガイドブック・シリーズ 第4巻 近鉄』 誠文堂新光社、1970年。
  • 鉄道史資料保存会『近鉄旧型電車形式図集』、鉄道史資料保存会、1979年
  • 『近鉄電車形式集.1B』、レイルロード、2005年
  • 藤井信夫『車両発達史シリーズ8 近畿日本鉄道 一般車 第1巻』、関西鉄道研究会、2008年
  • 三好好三『近鉄電車 大軌デボ1形から「しまかぜ」「青の交響曲」まで100年余りの電車のすべて』(JTBキャンブックス)、JTBパブリッシング、2016年。ISBN 978-4-533-11435-9
  • 鉄道ピクトリアル
    • 「私鉄車両めぐり(38) 近畿日本鉄道[2]」『鉄道ピクトリアル』第103号、電気車研究会、1960年2月、43 - 49頁。 
    • 「私鉄車両めぐり(78) 近畿日本鉄道[終]」『鉄道ピクトリアル』第226号、電気車研究会、1969年7月、70 - 75頁。 
    • 「近畿日本鉄道特集」『鉄道ピクトリアル』第313号、電気車研究会、1975年11月。 

外部リンク

  • 鉄路の名優 電動貨車 - 近畿日本鉄道

関連項目


近畿日本鉄道の車両

現有車両

特急
標準軌間各線
南大阪吉野線
観光特急
団体専用列車
標準軌間各線
一般車
転換クロスシート車
L/Cカー
大阪名古屋線
奈良京都線
南大阪・吉野線
けいはんな線
観光列車
伊勢志摩お魚図鑑
事業用車

過去の車両

特急車
大阪・名古屋線
吊り掛け駆動
WNドライブ
京都・橿原線
吊り掛け駆動
WNドライブ
南大阪・吉野線
吊り掛け駆動
団体専用列車
標準軌間各線
一般車
大阪・名古屋線
吊り掛け駆動
大軌
参急
伊勢電
関急電・関急
自社発注車
WNドライブ
奈良電
クロスシート車
ロングシート車
奈良・京都線
吊り掛け駆動
旧大軌・関急
旧奈良電
WNドライブ
奈良電
自社発注車
南大阪・吉野線
吊り掛け駆動
旧大鉄・吉野
自社発注車
WNドライブ
自社発注車
志摩線
吊り掛け駆動
志摩電
三重交通
垂直カルダン駆動
旧三重交通
養老線
吊り掛け駆動
合併各社承継車
自社発注車
WNドライブ
自社発注車

600系III - 610系 - 620系 - 625系

伊賀線
吊り掛け駆動
合併各社承継車
自社発注車
WNドライブ
自社発注車
特殊狭軌線
吊り掛け駆動
垂直カルダン駆動
鮮魚列車
吊り掛け駆動

モワ10形II11 - 1920 - 22クワ50形I - 600系IIモ601モ602・モ603ク501ク502ク503

WNドライブ
荷物車
電動貨車
事業用車
大阪・名古屋線
奈良線

モワ10形I - モワ20形 - モト50形

旧奈良電
南大阪・吉野線
機関車
大阪・名古屋線
狭軌各線

デ1形 (1) - デ1形 (3 - 9) - デ11形 - デ25形 - デ31形(31・33) - デ51形 - デ61形 - デ71形 - DB90形

特殊狭軌線

関連項目

  • 表示
  • 編集